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青い森信用金庫様 コミュニケーション型統合情報基盤『Ciiv®(シーヴ)』の導入事例

顧客情報を全役職員で共有できる情報システムをNTTデータ東北と共同開発した青い森信用金庫様のシステム導入事例です。
(「月刊金融ジャーナル」2021年2月号 p36~p39より転載 )


NTTデータ東北と情報システム開発

青い森信用金庫(青森県/益子政士理事長)は、顧客情報を全役職員で共有できる情報システムをNTTデータ東北と共同開発し、2020年度下期から本格運用している。個人的なつながりから得ている情報や、前任の担当者が知っている情報など、現在の担当者が把握できていない情報も書き込んで伝えられるもので、顧客との関係強化につなげる狙い。

”オール青い森”で情報を共有

システムの名称は「CACS-NET」(カシス・ネット)で、約2年かけて開発した。渉外担当者であれば、例えば法人取引先の決算書類を始めとする情報から、経営者の趣味など個人的な情報まで入手しても、知りえた全ての情報を漏れなく引き継ぐことは難しい。また、紙ベースの情報はファイルに保存され、探し出す手間もあって活用しない職員も多かった。この点、カシス・ネットでは、あらゆる情報をデータ化し一元的に蓄積、活用できるほか、投稿画面を通じて全職員が情報を入力できる。「苗字は違うが、このお客さまの叔父が実は金庫の総代」といった情報や「このお客さまとあのお客さまは犬猿の仲」など、担当者が気を付けなければならない情報の記録も容易だ。営業店サポート部担当の工藤経志理事は「理事長から新入職員まで“オール青い森”で情報を共有し、誰よりもお客さまを親身になって知っている体制づくりを目指した」という。

職員の行動記録も閲覧可

属性情報のほか、訪問時にキャッチする「設備投資」などの資金ニーズの共有はもちろん、「こんなネジをつくっている会社を探している」「今では希少品種のりんごをつくる農家を探している」など、ビジネスマッチングのニーズへの対応にも活用できる。企業情報のほか、担当者の活動も公開し、全職員で応援できるようにしたのも特徴だ。例えば、担当者が何を提案し、反応はどうだったかという情報を入力し、それを見た上長、支店長、本部職員が、アドバイスを書き込むといったフォローが可能だ。それらの書き込みが時系列でずらりと並び、現在までの履歴、経緯が一目瞭然というわけだ。かつては、渉外担当者は帰店するとパソコンで日報を打ち、企業ごとにつづられた紙ベースの情報ファイルに交渉結果など訪問記録を記入。回覧に回し、検印から戻ったらファイルを元に戻すという作業に、手間と時間をかけていた。「そのファイルをどの程度活用するかは個々人によって異なっていた。共有もされず、もったいないことをしていた」との反省もあった。全情報が見られると言っても、その情報量は、まさにビッグデータ。このため「A支店とか〇〇地区といった切り口で活動を見たり、融資金額1,000万円以上といった条件で該当企業を絞りこんだり、様々なアレンジができるようにしてある」(工藤理事)という。

良い取り組みには「いいね」ボタン

職員の行動が、客観的な視点で評価されるように、投稿画面にはツイッターのような「いいね」ボタンも付けられている。「ある会社の社長がフリーローンを使ってくれた」と担当者が書いたメッセージに、本部の職員が「僕が担当していた頃、その社長はバブル時に生産された高級外車をレストア(修理)するためにローンを使ってくれました。まだ大事に持っているかな」と書き込む。すると、その情報提供を評価した誰かが「いいね」ボタンを押すといった格好だ。また、来店客から話を聞いた窓口担当者のトスアップが成約につながるケースなど、これまでスポットが当たる機会が少なかった影のファインプレーも見える化され、評価できるようになった。「いいね」ボタンの発案は、職員の行動のプロセスを評価したい益子理事長によるものだ。

業績シミュレーションも容易に

このほか、商談中の融資案件を含む、融資実行予定金額などの見込み先情報を集計し、支店の月末の着地予想値の確認も可能にした。「しんきん共同センター」から還元された勘定系データを取り込めることから、残高や業績のシミュレーションも容易にできる。例えば月次の目標に対してどの程度で着地できるか。足りなければ、実行予定日が不確実な先に実行日を早めてもらう交渉は可能か、といった次のアクションへの判断もしやすくなった。営業店ではかつて、様々な帳票を取って、月末の着地予想などをシミュレートし、コメントを付けた報告書を数日かけて作成していた。カシス・ネットでは、取引先の予定や見込みをその都度入力するようにしているため、手作業の報告書作成はなくなった。開発を担当した営業店サポート部の工藤竜也次長は、「メリットがなければ、忙しい営業店は入力しなくなる可能性があると考えた。見込み先情報を始めきちっと情報を入れていけば、定期報告の書類も容易につくれるし、自店の成績がどうなるかも見える」と。また、工藤理事は「ベンダーのシステムエンジニアが考える機能は、金融機関側が必ずしも必要としないものもある。NTTデータ東北の担当者さんには何度も来てもらい、私たちの考え、要望を理解してもらった。まさに痒い所に手が届く仕組みを作ってくれた。まだ具現化していない機能もあるので、本格運用している現在も開発は続いている」と語っている。

益子理事長に聞く”開発の狙い”「CACS-NET」は町医者のカルテ

-システム開発の狙いは。

背景には幾つかあるが、大きなものが広域合併による人事異動だ。当金庫は2009年に3つの信用金庫が合併して誕生した。その後の人事異動で職員が地元を離れ、お客さまと初めて面会するケースが増えた。従来は、お客さまご自身のことだけでなく、親戚のことや犬の名前だって分かっていた。ところが転勤で、私たちが得意とするフェース・トゥ・フェースの地域密着感が失われてしまう。これは何とかしなければと思った。

-犬の名前まで知っているのですか。

我々、信用金庫の強みだ。前任に続いて後任の担当者も犬の名前を知っていて、何をすればどんな芸を披露してくれるかまで把握していれば、お客さまとの親しい距離感を保つことができる。かつて担当した職員や個人的にお客さまを知っている職員が、現在の担当者に情報を伝えられる、活発なコミュニケーションの仕組みが必要だと思った。「三人寄れば文殊の知恵」というが、“オール青い森”となって集まれば、とんでもない知恵になり、現場の職員は楽になる。

-顧客情報の共有ですね。

当金庫は、診療訪問をメインとする町医者を標榜している。町医者という以上、お客さまのカルテが重要だ。既往症(経営課題)やアレルギー(嫌がること)など、過去に得た情報を含め、お客さまの情報を電子カルテにどんどん蓄積して、それを踏まえて提案などの活動を行うべきだと考えた。

-それはすごいカルテになりますね。

そのほか、職員のプロセスを評価したいという思いもあった。「顧客ファースト」を貫くためには、数字ばかりを追いかける実績主義であってはならない。例えば、3年がかりでお客さまとの関係をつくり、実行段階になった時に転任となって、着任したばかりの後任の実績となるのはいかがなものか。担当者の顧客への思いも見えるようにすれば、プロセスの評価もそれなりにできるのではないかと考えた。

-理事長が書き込むことは。

「ここの社長は高校時代の同級生で、こういうことに興味がある」といった細かな点まで、頻繁に書き込んでいる。「理事長が直々に書いてくれた」と感激する職員もおり、場合によっては「一緒に行こう」と呼びかけたりもしている。

-同行訪問されているのですか。

理事長である私も、診療訪問をメインとする町医者。足を運ぶことを職員には約束しているので、書き込みがあればすぐにでも行きたいと思っている。

-構想はいつ頃からありましたか。

システムの開発はおよそ2年前だが、イメージは随分前から持っていた。私は、渉外歴が長く、八戸市内の取引先をたくさん歩いてきた。金庫で一番滞在期間が長いから、経験と知識が豊富で、誰よりも情報を持っている。しかし、様々な情報を職員に教えてあげたい思いはあっても、経営者の立場上、ダイレクトに電話することが難しい。情報を打ち込めるシステムがあれば、それができると思った。

-「いいね」ボタンを発案されました。

SNSをイメージしてつくった。グループで侃侃諤諤やれば、良いアイデアも浮かぶ。私は、情報を教えてあげることで職員の成果になればと思っているが、自分の仕事をしなければならない中で、誰かのために入力することに時間を割くことができない職員もいるはず。「いいね」ボタンを考えたのはそのためでもある。いずれ仕組みをつくるが、例えば大勢が評価する取り組みをした職員には、ポイントを付与し、人事評価も検討したい。そうなれば、もっと多くの人が情報を入力するようになるだろう。

-名前も発案されたそうですね。

当金庫では、CACS(カシス/ CA:チェック&アクション、C:コミュニケーション、S:スピード)という言葉を、長期計画の中でスローガンにしている。カシスはすっぱいけれど、とても体に良い果物。青森県はカシスの生産が日本一で、それにちなんでいる。「チェックしてすぐに行動に移し、ネットによって会話を起こして、迅速に行動する」という意味で、開発したシステムの名前も「CACS-NET」が良いのではと提案し、一発で決まった。

-今後も開発は続きますか。

システム開発の世界に完成という言葉はない。より使い勝手の良いシステムへと、もっともっと進化させたいと考えている。

(聞き手=中谷 彰吾)

プロフィル

益子 政士(ますこ まさし)
63歳、青森県出身。

1980年室蘭工大卒、八戸信金(現青い森信金)入庫、

リスク統括部長を経て2010年6月理事、2012年6月常務、2016年6月専務、2017年6月理事長。

共同開発のベースとなった新システム「シーコネクター・シーヴ」

NTTデータ東北が青い森信金と共同開発した情報システムは、金融機関向けに同社が2020年から独自に提供を始めたソリューション・パッケージ「CConnector・Ciiv」(シーコネクター・シーヴ)がベースとなっている。Ciivの特徴は、青い森信用金庫の活用事例にもあるように、対話型メッセージ機能を活用することで組織に新たなコミュニケーションを生み出すこと。メッセージは可視化された情報資産として金融機関内で引き継がれる。同社ではまた、他システムとの連携や機能拡張など、個別金融機関のニーズを踏まえたソリューションの提供も可能としている。

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青い森信用金庫 NTTデータ東北と情報システム開発.pdf

本件に関するお問い合わせ先

株式会社NTTデータ東北
金融事業部 信金営業担当
堀・池田
電話:022-721-5540